決算整理仕訳を徹底解説【簿記3級最頻出テーマ】貸倒引当金・減価償却・経過勘定
決算整理仕訳とは何か
決算整理仕訳とは、決算にあたって帳簿の残高を正しい金額に修正するための仕訳です。日商簿記3級の第1問(仕訳)と第3問(精算表・財務諸表作成)の両方で問われる、試験全体を通じて最も重要なテーマです。
日々の取引を記録しただけでは、期末時点での正確な財産状況や1年間の正しい損益が反映されません。そのため決算時に、在庫の確認、資産の価値の見直し、費用・収益の期間対応などを一括して調整する必要があります。この記事アプリの「決算整理仕訳」カテゴリでも、まさにこのテーマの問題を重点的に練習できます。
💡 決算整理仕訳は「芋づる式」の得点源 決算整理仕訳を1つ間違えると、精算表・財務諸表の該当箇所すべてに影響が波及します。逆にいえば、決算整理仕訳のパターンを確実にマスターすれば、第3問(配点35点)で大きな失点を防ぐことができます。
売上原価の算定(しーくり くりしー)
決算整理の中でも最初に行うのが、売上原価を算定するための仕訳です。3分法では、期中の「仕入」勘定には当期の仕入高がそのまま計上されているため、決算時に期首・期末の在庫(繰越商品)を反映させて売上原価を計算し直す必要があります。
| 決算整理仕訳 | 内容 |
|---|---|
| (借方)仕入/(貸方)繰越商品 | 期首商品棚卸高を仕入勘定に振り替える |
| (借方)繰越商品/(貸方)仕入 | 期末商品棚卸高を仕入勘定から差し引く |
この2つの仕訳は「しーくり・くりしー」という語呂合わせで覚えられることが多く、「仕入→繰越商品」「繰越商品→仕入」の順番で記入する2段階の仕訳です。この処理により、仕入勘定の残高が「当期の売上原価」を示す金額に修正されます。
売上原価の計算式:
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期仕入高 - 期末商品棚卸高
貸倒引当金の設定(差額補充法)
売掛金や受取手形などの債権は、将来回収できなくなる(貸し倒れる)リスクがあります。そこで決算時に、将来の貸し倒れに備えて「貸倒引当金」という見積り額を計上します。
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| 貸倒引当金 | 将来の貸し倒れに備えて設定する評価性の勘定(資産のマイナス項目) |
| 貸倒引当金繰入 | 貸倒引当金を新たに計上・追加するときに使う費用の勘定 |
| 差額補充法 | 「設定すべき金額」と「すでに計上されている貸倒引当金の残高」との差額だけを追加計上する方法 |
日商簿記3級では主に差額補充法が出題されます。計算の考え方は以下の通りです。
設定額 = 売掛金(+受取手形)期末残高 × 貸倒設定率
繰入額 = 設定額 - 貸倒引当金の期末残高(決算整理前)
(借方)貸倒引当金繰入 ×××/(貸方)貸倒引当金 ×××
⚠️ 「設定額」と「繰入額」を混同しない 差額補充法の最大のつまずきポイントは、「仕訳する金額=設定額」だと思い込んでしまうことです。実際に仕訳するのは「設定額と既存残高との差額」のみです。既存の貸倒引当金残高を必ず確認してから繰入額を計算しましょう。
固定資産の減価償却(定額法)
備品・車両運搬具・建物などの固定資産は、使用するにつれて価値が減っていきます。この価値の減少を、決算のたびに費用として計上する手続きが減価償却です。日商簿記3級では主に「定額法」による計算が出題されます。
1年分の減価償却費 =(取得原価 - 残存価額)÷ 耐用年数
| 記帳方法 | 仕訳 |
|---|---|
| 間接法(3級で主に出題) | (借方)減価償却費/(貸方)減価償却累計額 |
| 直接法 | (借方)減価償却費/(貸方)固定資産(備品など) |
間接法では、固定資産そのものの帳簿価額を直接減らすのではなく、「減価償却累計額」という評価性の勘定を使ってこれまでの減価償却の累計額を管理します。貸借対照表上では、固定資産の取得原価から減価償却累計額を差し引いた金額が、その資産の現在の帳簿価額として表示されます。
計算例:取得原価600,000円、残存価額0円、耐用年数6年の備品を、期首から使用した場合の1年分の減価償却費
減価償却費 =(600,000円 - 0円)÷ 6年 = 100,000円
(借方)減価償却費 100,000 (貸方)減価償却累計額 100,000
経過勘定(見越し・繰延べ)
費用や収益は、実際にお金を支払った・受け取ったタイミングと、その費用・収益が「本当に発生した期間」がズレることがあります。このズレを正しい期間に対応させるための決算整理が経過勘定の処理です。
| 経過勘定 | 分類 | 内容 |
|---|---|---|
| 前払費用 | 資産 | 次期分の費用を当期に前払いした場合、その分を当期の費用から除く |
| 未払費用 | 負債 | 当期分の費用がまだ支払われていない場合、その分を当期の費用として追加する |
| 前受収益 | 負債 | 次期分の収益を当期に前受けした場合、その分を当期の収益から除く |
| 未収収益 | 資産 | 当期分の収益がまだ受け取られていない場合、その分を当期の収益として追加する |
💡 「今期にいくら計上すべきか」で考える 経過勘定でつまずく最大の理由は、「お金の動き」と「収益・費用の発生」を混同することです。経過勘定を解くときは、常に「今期の損益計算書に計上すべき金額はいくらか」という視点で考えると整理しやすくなります。
具体例:家賃を毎年12月1日に向こう1年分(120,000円)前払いしている場合、3月31日決算時の仕訳
支払った120,000円のうち、当期(12月〜3月の4か月分)は40,000円、
次期分(4月〜11月の8か月分)は80,000円を前払費用として処理する。
(借方)前払費用 80,000 (貸方)支払家賃 80,000
なお、経過勘定は翌期首に「再振替仕訳」として、決算時と逆の仕訳を行い、経過勘定の残高をもとの費用・収益の勘定に戻す処理も出題されます。
貯蔵品への振替
収入印紙や切手などの消耗品的な費用は、通常「租税公課」「通信費」などの費用として処理していますが、決算時に未使用分が残っている場合は「貯蔵品」という資産の勘定に振り替えます。
(借方)貯蔵品 ×××/(貸方)通信費(または租税公課) ×××
この仕訳も、翌期首に再振替仕訳(貯蔵品から通信費等へ戻す仕訳)が出題されることがあります。経過勘定と同様、「未使用の部分は資産として翌期に繰り越す」という考え方が土台になっています。
消費税の処理(税抜方式)
日商簿記3級では、消費税の処理(税抜方式)も出題対象です。商品を仕入れたときに支払った消費税は「仮払消費税」、販売したときに預かった消費税は「仮受消費税」として、それぞれ仮の勘定に記録しておきます。
決算時の仕訳:
(借方)仮受消費税 ×××/(貸方)仮払消費税 ×××
(貸方)未払消費税 ×××(差額)
仮受消費税(預かった消費税)から仮払消費税(支払った消費税)を差し引いた差額を、「未払消費税」として決算時に計上します。
決算整理仕訳のまとめ表
以下は、簿記3級で頻出する決算整理仕訳を一覧にしたものです。試験直前の総復習に活用してください。
| 決算整理項目 | 仕訳のポイント |
|---|---|
| 売上原価の算定 | 「仕入→繰越商品」「繰越商品→仕入」の2段階(しーくり・くりしー) |
| 貸倒引当金の設定 | 差額補充法:設定額-既存残高=繰入額 |
| 固定資産の減価償却 | 定額法:(取得原価-残存価額)÷耐用年数。間接法(減価償却累計額)で記帳 |
| 経過勘定(前払・未払) | 「今期の損益にいくら計上すべきか」で考える |
| 貯蔵品への振替 | 未使用の切手・収入印紙等を資産に振り替える |
| 消費税の処理 | 仮受消費税-仮払消費税=未払消費税 |
| 現金過不足の整理 | 決算日までに原因が判明しない残高は「雑損」または「雑益」に振り替える |
よくある質問
Q:決算整理仕訳の種類が多くて覚えられません。
一気にすべてを覚えようとせず、「売上原価の算定」「貸倒引当金」「減価償却」「経過勘定」という4つの柱に分けて、1つずつ確実に得意にしていくのがおすすめです。この4つで決算整理仕訳の出題の大部分をカバーできます。1つのテーマにつき10問前後、繰り返し仕訳練習をすると定着します。
Q:差額補充法の「差額」の意味がわかりません。
例えば、貸倒引当金の設定額が8,000円で、すでに貸倒引当金の残高が5,000円ある場合、追加で計上するのは差額の3,000円だけです。すでにある残高分は「もう計上済み」なので、二重に計上しないようにする、という考え方です。図やT字勘定を使って、既存残高と設定額の関係を可視化すると理解しやすくなります。
まとめ
📝 この記事のまとめ 決算整理仕訳は第1問・第3問の両方で問われる最重要テーマ。 売上原価の算定は「しーくり・くりしー」の2段階仕訳で処理する。 貸倒引当金は差額補充法(設定額-既存残高=繰入額)が3級の基本。 減価償却は定額法・間接法(減価償却累計額)が中心。計算式を覚える。 経過勘定は「今期にいくら計上すべきか」という視点で考えると整理しやすい。 貯蔵品・消費税の処理も決算整理の定番テーマとして押さえておく。
決算整理仕訳をマスターしたら、次は「第3問 精算表・財務諸表作成問題の攻略ガイド」の記事で、これらの仕訳を実際にどう精算表・財務諸表に反映させるかを学習することをおすすめします。
決算整理仕訳の「つまずきやすい」ポイントと解消法
つまずきポイント1:売上原価の算定で仕入勘定と繰越商品勘定を混同する
間違った理解:期首商品棚卸高と期末商品棚卸高をどちらも同じように扱ってしまう 正しい理解:期首分は「繰越商品→仕入」、期末分は「仕入→繰越商品」と、向きが逆になる
対策:T字勘定を書いて、仕入勘定の中身が「期首在庫+当期仕入高-期末在庫=売上原価」になる流れを図示しながら覚えましょう。
つまずきポイント2:減価償却費の計算で「残存価額」の扱いを間違える
具体例:残存価額をゼロと勘違いして計算してしまう、あるいは逆に問題文にない残存価額を仮定してしまう
対策:必ず問題文に明記された「取得原価」「残存価額」「耐用年数」の3つの数値を確認してから計算式に当てはめる習慣をつけましょう。3級では残存価額をゼロとする出題が主流ですが、問題文の指示を必ず確認することが大切です。
つまずきポイント3:経過勘定の「見越し」と「繰延べ」を逆にしてしまう
具体例:前払費用(繰延べ)と未払費用(見越し)の仕訳の向きを逆に書いてしまう
対策:以下のように整理して覚えると混同しにくくなります。
【繰延べ】お金は払った(受け取った)が、まだサービスは受けて(提供して)いない
→前払費用(資産)/前受収益(負債)
【見越し】サービスはすでに受けた(提供した)が、まだお金を払って(受け取って)いない
→未払費用(負債)/未収収益(資産)
決算整理仕訳の実践的な演習ステップ
決算整理仕訳を得意分野にするための、おすすめの学習ステップです。
- 各テーマを個別に反復練習する(1週目):売上原価、貸倒引当金、減価償却、経過勘定のそれぞれを、単独の仕訳問題として10〜20問ずつ解く
- 複数テーマを組み合わせた問題を解く(2週目):実際の試験のように、1つの決算整理事項の中に複数のテーマが混在する問題に取り組む
- 精算表形式で通しで解く(3週目以降):決算整理仕訳を精算表の修正記入欄に反映させ、損益計算書欄・貸借対照表欄まで完成させる練習を行う
この段階的な練習により、決算整理仕訳の「個別の理解」から「総合問題での運用力」へとスムーズにステップアップできます。